住宅制振設計マニュアルとは?制振装置の新基準を徹底解説!

公開日:2024/09/25
制振設計

地震大国である日本では、住宅の耐震性や制振性能が非常に重要視されています。住宅制振設計マニュアルは、最新の基準に基づいて、地震に強い住宅を設計するためのガイドラインです。このマニュアルにより、これまで不明確だった制振性能の判断基準や設計の統一が図られ、より安全で安心な住まい作りが進んでいます。

まず制振装置とは

地震対策としてよく耳にする「制振装置」とは、どのようなものなのでしょうか。地震の揺れを効果的に軽減する技術として、住宅の安全性を向上させるために広く使われています。この節では、制振装置の基本的な役割とよく混同される「耐震」や「免震」との違いについて解説します。

制振装置とは

制振装置は、建物の揺れを抑制するための装置で、とくに地震が発生した際にその効果を発揮します。地震によって発生する建物の揺れを吸収し、建物にかかる負担を軽減する役割を持っています。

具体的には、建物内部にダンパーやその他の機械装置が設置され、揺れが発生した際にそのエネルギーを吸収して、建物自体が受けるダメージを抑える仕組みです。

制振装置の主な役割は、建物が揺れ始めた時に振動を吸収することで、その揺れを長引かせないようにすることです。揺れを短くすることで、建物が受けるダメージを少なくし、建物内にいる人々の安全を確保することが可能です。

たとえば、大きな揺れが何度も繰り返されると、建物の構造に深刻なダメージが生じる可能性がありますが、制振装置があることでこれを防ぎ、建物の耐久性を高めることができます。制振装置は、揺れをただ抑えるだけでなく、そのエネルギーを吸収し、効果的に建物全体に分散させることで、住宅の耐震性能を向上させる技術です

耐震・免震のちがい

制振装置の機能をより理解するためには、「耐震」や「免震」との違いを知ることが重要です。これらの言葉はよく混同されますが、それぞれの目的と機能は異なります。
まず、「耐震」とは、建物自体を強固に作り、地震の揺れに耐えることを目的とした技術です。建物の構造を強化することで、地震時の揺れに耐えうる強さを持たせるものです。これは、建物そのものを強くすることにより、揺れに対抗し、崩壊や倒壊を防ぐことを目指しています。

次に「免震」とは、建物の基礎部分に特殊な装置を設置し、地震の揺れが建物に伝わらないようにする技術です。建物全体を揺れから「免れる」ことを目指すため、地震の揺れを建物に直接伝えず、揺れを逃がす仕組みを採用しています。この結果、建物は地震による直接的な揺れを受けずに済みます。

一方「制振」は、建物内部に設置された装置が地震の揺れを吸収することで、揺れを和らげる技術です。制振装置は建物の内部に配置され、耐震や免震と組み合わせて使用することで、より効果的に住宅を守ることが可能です。このように、制振、耐震、免震はそれぞれ異なるアプローチで建物を保護しますが、組み合わせて使うことでさらに高い安全性を確保できます。

制振装置を取り巻く現状

住宅の安全性を確保するために、制振装置は欠かせない存在です。しかし、現状ではその選定や性能の基準が統一されておらず、設計者や施工者が迷うことが少なくありません。また、一部の制振装置は技術の進化に追い付いておらず、時代遅れになっていることも課題とされています。

制振の判断基準がバラバラ

現在、制振装置の選定基準はメーカーや設計者によって異なり、統一された判断基準が存在しない状況です。これは、各メーカーが独自の実証実験をしているために起こるもので、性能比較が難しくなっています。たとえば、ある制振装置が他社製品と比べて優れていると主張されても、それを判断するための明確な指標が不足していることが多いです。

このような状況では、設計者は多くの情報を集め、自分なりの基準で選定するしかなく、時には不安定な選択を強いられることになります。

最新の性能に追いついていないものもある

さらに、制振装置のなかには、最新の地震データや技術に対応していないものも見られます。地震の規模や周波数特性に応じた制振効果が十分でない古い装置が市場に残っている一方で、最新技術を反映した製品の導入が進んでいない企業もあります。

このような状況では、過去の地震データをもとにした設計基準では、実際の震災時に期待通りの効果を発揮しない可能性があります。制振装置が持つ本来の効果を発揮させるには、技術の進化に追いつくための基準やガイドラインの整備が必要です。

現状を打破する住宅制振設計マニュアル

こうした背景の中で登場したのが「住宅制振設計マニュアル」です。このマニュアルは、制振装置の選定や設計基準を統一し、安全性を高めるために「一般社団法人 日本免震構造協会」により作成されました。「戸建住宅制振マニュアル編集協議会」により編纂され、2024年に発売されています。これにより、設計者や施工者はより信頼性の高い判断が可能となり、安心して住まいを提供することができます。

住宅制振設計マニュアルとは

住宅制振設計マニュアルは、地震に強い住宅を設計するためのガイドラインです。これまでバラバラだった制振装置の選定基準を統一し、設計者が適切な判断を下せるようにすることを目的としています

具体的には、地震の揺れを抑えるための制振装置の選び方や設置方法、性能評価基準が詳しく記載されており、実際の設計や施工において重要な参考資料となります。

住宅制振設計マニュアルの主な内容

このマニュアルには、制振装置の性能評価に関する詳細な基準が示されています。たとえば、地震の規模に応じた制振装置の基準や、制振装置の必要本数による適切な設計方法が紹介されています。

また、制振性能の測定方法や評価基準についても明確に記載されており、これまで不明確だった部分が整理されました。これにより、設計者や施工者は迷うことなく、最新の技術を取り入れた設計が可能となります。

住宅制振設計マニュアルが及ぼす影響

このマニュアルが導入されることで、住宅業界全体に大きな変化がもたらされることが期待されています。まず、設計基準が統一されることで、消費者はより安全な住宅を手に入れることができ、設計者や施工者も作業がしやすくなります。

また、メーカーにとっても、基準が明確になることで技術開発の方向性が見えやすくなり、より高性能な制振装置の開発が進むでしょう。住宅の安全性が向上することで、今後の地震対策に対する不安が軽減されることが期待されます。

制震ダンパーとは

制震ダンパーは、地震の揺れを軽減するために設置される装置です。家や建物の安全性を高めるために、とくに耐震だけでは補えない部分を補強する役割を果たしています。地震大国である日本において、制震ダンパーの導入は、建物の寿命を延ばすと同時に、人々の安心な生活を支える重要な技術として注目されています。

制震ダンパーとは

制震ダンパーは、建物に加わる地震の揺れを吸収・軽減するために取り付けられる装置です。主に木造住宅や高層ビルなどで使用され、地震のエネルギーを効果的に吸収して建物の変形や損傷を抑える役割を果たします。制震ダンパーは、地震による急激な揺れを抑え、建物が揺れ続ける時間を短縮することで、建物にかかる負担を軽減します。

地震対策としては、耐震構造や免震構造もありますが、制震ダンパーはこれらとは異なる機能を持っています。耐震構造は、建物が揺れても崩壊しないようにすることを目的としています。

一方、免震構造は建物と地盤の間に免震装置を設置し、地震の揺れを建物に直接伝わらないようにするものです。制震ダンパーは、これらに加えて建物自体の揺れを抑え、地震のエネルギーを吸収する役割を持っています。

制震ダンパーの種類

制震ダンパーには、いくつかの種類があります。主に使用されるものとしては、ゴムダンパー、オイルダンパー、鋼材ダンパーの3種類があります。それぞれのダンパーには異なる特徴があり、設置する建物や地震の規模に応じて選ばれることが一般的です。

ゴムダンパーは、ゴム素材の特性を活かして地震のエネルギーを吸収する仕組みを持っています。ゴムは弾力性があり、揺れに対して柔軟に対応できるため、建物の揺れを軽減する効果があります。また、ゴムダンパーは耐久性が高く、メンテナンスが比較的少なくて済むことがメリットです。

一方で、ゴムダンパーのデメリットとしては、施工にコストがかかることがあげられます。また、急激な温度変化にはゴムの耐久性には限界があるため、はやく劣化してしまう可能性もあります。

オイルダンパーは、シリンダーの中にオイルを封入し、その流動性を利用して揺れを吸収する仕組みを持っています。オイルの動きによってエネルギーを分散させ、建物にかかる力を減少させます。オイルダンパーの大きなメリットは、非常に大きな揺れに対しても効果を発揮できる点です。

しかし、オイルダンパーは設置本数が必要なことがデメリットです。設置本数は設置する住宅の大きさによります。導入コストが高くなる傾向があるため、慎重に選ぶ必要があります。

鋼材ダンパーは、鋼材の弾力性を利用して揺れを吸収する仕組みを持っています。鋼材は非常に強度が高く、地震のエネルギーを効果的に吸収できるため、大規模な建物や高層ビルなどにも適しています。鋼材ダンパーのメリットは、耐久性が非常に高く、長期間にわたって効果を発揮することです。

一方、鋼材ダンパーのデメリットとしては、設置場所や構造に応じた専門的な設計が必要であることが挙げられます。また、鋼材自体が非常に重いことから、建物にかかる負荷が増えることも考慮しなければなりません。

制震ダンパー導入のメリット

制震ダンパーの導入には、多くのメリットがあります。まず、地震の揺れを効果的に抑えることで、建物の損傷を最小限に抑えることができます。とくに、木造住宅などでは地震の揺れによる倒壊リスクを大幅に減らすことができます。揺れを抑えるだけでなく、建物内の家具や設備への影響も軽減され、住民の安全を守ることにも繋がります。

また、制震ダンパーは一度設置すれば長期間にわたって効果を発揮するため、コストパフォーマンスが高い点もメリットです。メンテナンスが少なくて済む種類のダンパーを選べば、維持費も抑えられます。

しかし、制震ダンパーは設置が新築だけに限られるものや結果的にコストがかかるものもあります。設置する条件により適切な制震ダンパーの種類を選択する必要があるでしょう。

制震ダンパー導入の効果性

制震ダンパーを導入することの効果は、地震が発生した際に最大限に発揮されます。地震の揺れを吸収・軽減することで、建物全体の被害を最小限に抑え、修理や復旧にかかるコストを大幅に削減することが可能です。また、揺れが抑えられることで、建物内の住民や使用者の不安感も軽減されます。

制震ダンパーは、地震後の余震にも対応できるため、一度の地震でダメージを受けた建物が、その後の揺れによってさらに損傷することを防ぐ効果もあります。とくに日本のように余震が頻繁に発生する地域では、制震ダンパーの効果がいっそう重要視されます。

最後に、制震ダンパーは、建物の長寿命化にも寄与します。揺れによる構造体の疲労や劣化を抑えることで、建物全体の寿命を延ばし、長期的なメンテナンス費用の削減にもつながります。制震ダンパーの導入は、地震に対する備えとして、そして建物の資産価値を保つためにも有効な手段と言えるでしょう。

制震ダンパーを設置するなら

地震の多い日本において、家や建物の揺れを抑えるために制振ダンパーを導入することは重要だと説明してきました。地震の多い日本では、建物の揺れを軽減するために制振ダンパーを導入することが非常に重要です。

地震の際、揺れによる建物の損傷を防ぐだけでなく、住民の安全を確保するために役立ちます。しかし、制振ダンパーには多くの種類があり、それぞれの特性や費用、メンテナンスの要件が異なります。ここでは、制振ダンパーの選び方について詳しく解説します。

建物の構造に合ったものを選ぶ

制振ダンパーは、建物の構造や用途によって適した種類が異なります。たとえば、木造軸組工法はほとんどのダンパーが設置可能ですが、2×4工法では設置できるバンパーが限られます。

地震が多い地域に住む場合は、建物に適した制振ダンパーを選ぶことが不可欠です。また、建物の設計段階で導入するのか、既存の建物に後付けするのかによっても、選ぶべきダンパーの種類が異なることがあります。設置の難易度や設計に合わせて最適な製品を選びましょう。

予算とメンテナンスを考慮する

制振ダンパーの種類によって、導入費用やメンテナンス費用が異なります。たとえば、本体費や施工費のほかに、配送費や副材料費もかかる可能性があります。予算に合わせて、維持管理にかかるコストも考慮して選ぶとよいでしょう。

費用対効果を重視する場合、予算に応じて最適な制振ダンパーを選ぶことが大切です。長期的に見て、メンテナンスにかかるコストも考慮し、経済的に無理のない選択をすることが求められます。また、既存の建物に後付けする場合には、設置費用も追加でかかるため、その点も考慮しましょう。

効果の持続性を確認する

制振ダンパーは、地震発生時に効果を発揮するだけでなく、長期間にわたって効果を維持することが求められます。家の間取りにあっているものや、断熱材に鑑賞しない製品を選ぶことで、長期的な安心感が得られます。安心安全に設置するためには、メーカーのアフターサービスも確認しておくとよいでしょう。

専門家のアドバイスを受ける

制振ダンパーの選び方に迷った場合、最も確実な方法は専門家に相談することです。建物の構造や地震リスク、さらには地盤の状態などを考慮した上で、最適な制振ダンパーを提案してもらうのが理想的です

とくに、大規模な住宅やビルなどの場合、建築士や施工業者、地震工学の専門家と相談し、建物に最も適した製品を選定することが重要です。

また、制振ダンパーの設置場所や数についても専門的な知識が必要です。どこに、どれだけの数を設置するかによって、効果が大きく変わる場合があります。したがって、導入前には詳細な相談を行い、最善の選択をすることが推奨されます。

制振装置の導入で未来の住まいが変わる

制振技術は今後、住宅設計においてますます重要な役割を果たすでしょう。ここでは、制振装置の導入がもたらす未来の住宅像について考えてみます。

住宅制振設計マニュアルの導入により、住宅の安全性は大幅に向上すると期待されています。とくに日本のように地震が頻繁に発生する地域では、住まいの耐震性能は非常に重要です。制振装置は、地震の揺れを軽減し、建物が倒壊するリスクを減らすだけでなく、内部の損傷を抑える効果もあります。このため、家族の命や財産を守るためにも、制振装置の導入は必要不可欠な選択肢となるでしょう。

さらに、技術の進化にともない、制振装置は今後もより高性能化が進むと考えられます。これにより、住宅が持つ耐震性能はますます強化され、未来の住まいはより安心・安全なものとなるでしょう。今後の住宅設計において、制振装置が標準装備となる日もそう遠くはないかもしれません。

まとめ

住宅制振設計マニュアルは、住宅の安全性を向上させるための重要な基準です。これまで統一されていなかった制振装置の基準を整理し、設計者や施工業者が信頼できる指針を提供することで、住宅の耐震性能を向上させることができます。

消費者にとっても、適切な制振装置を選ぶ際の参考となり、より安心して住まいを選べるようになるでしょう。また、制振装置としては制震ダンパーを紹介しました。

地震大国日本において、制振装置の導入は今後ますます重要になると考えられます。新たな技術と基準の整備が進む中で、安全で快適な住まい作りが実現されることが期待されています。制振技術の進化とともに、未来の住まいがより強く、より安全なものになることは間違いありません。

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イメージ引用元:https://www.evoltz.com/引用元:https://miraie.srigroup.co.jp/
引用元:https://www.sumitomoriko.co.jp/trc-damper-wh/

引用元:https://group.nikkeikin.co.jp/

引用元:https://www.seishin-system.com/
会社名evoltz(株式会社evoltz)MIRAIE(住友ゴム工業株式会社)TRCダンパー(住友理工株式会社)ブレースリー(日本軽金属株式会社)MER System(日本制震システム株式会社)
特徴・大地震直前の震度1から作用し始め、繰り返す余震にも強い
・世界有数の自動車メーカーに採用されるドイツのBILSTEIN社の制振装置
・全国100箇所以上で制振体感イベント実施中
・設置基数は1階の4ヵ所のみでOK
・キラーパルスに対しても効果を発揮
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・90年間メンテナンスフリー
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ダンパーの種類油圧(オイル)ゴムゴム鋼材(金属)油圧(オイル)
独自技術地震のエネルギーを吸収&駆体の変形を抑える「バイリニア特性」で特許取得揺れを熱に変えて吸収する「高減衰ゴム」地震エネルギーを熱エネルギーに瞬時に変換する「特殊粘弾性ゴム」採寸・切断なしの簡単施工が可能な「高さ調整新機構」で特許申請中世界初の「錆びないめっき」の特許技術
データ・100万回の作動耐久試験に耐えられる
・−20~80℃に耐えられる
・振動台実験において、中大地震 合計8回以上の地震に耐える
熊本地震でも全壊・半壊ゼロ約50%水平変位を低減阪神淡路大震災の125%の揺れ6回後にも性能保持毎秒0.6mmの非常にゆっくりな風の揺れから効果を発揮
対応工法在来工法、2×4工法在来工法、2×4工法在来工法、2×4工法在来工法、2×4工法在来工法、2×4工法、2×6工法
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